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コルトガバメンツ@パルコ劇場

tfxxx theatre

運よくセンター付近の席だったのでとても観やすかった。お芝居に詳しくないので上手い下手とか、あるいは劇場向きの演技かどうかとかそういうことはまったく語れないのであくまでわたし個人の感想なのですが。



とある事情で会社を辞めひきこもりになった27歳の青年ハジメのもとに、小学校時代の同級生3人が訪ねてきます。そこで小学校時代の思い出と、ハジメが会社を辞めることになった事件のことがだんだん語られていきます。なぜか会社を辞めた友達がわりとまわりにいたり、自分自身も半分ひきこもりみたいな生活をしていたりするので苦笑、ハジメがひきこもっていることをなんとかごまかそうとするあたりは身に覚えありすぎて胸が痛かった……笑
舞台上の同じセットを巧みに使い、5人の俳優だけで15年前、1年前、現在の情景が入れ替わり立ち替わり演じられます。当然衣装も基本的には同じ(小学生のときは帽子とランドセルが加わる)なのですが、これがちゃんと成立していたのがすごいと思いました。とくに主演の藤ヶ谷さんは小学生のとき、会社員のとき、そしてひきこもりの現在と、それぞれ表に出ている性格が違ううえに時系列がすぐ変わるので難しい役どころなのですが、力ある役者さんたちに支えられてということもあるのでしょうが違和感なくそれぞれの場面にはまっているように感じました。サラリーマンのときはいつもの凜とした立ち姿なのにひきこもりのときはおなかに力の入っていない、少し肩の落ちた姿勢の悪い姿だったり、細かいところまで落とし込んでいるなあと。
同級生の三人も、同級生のときと会社の同僚のときでちゃんと別人に見えて、当たり前のことなのかもしれませんがすごいなーと素直に感心でした。トリックスター的な役どころのゾメはパンフレットでさんざん嫌なやつと語られていたのでどんなんだろうと思っていたのですが、あーこういうあまのじゃくでちょっと意地悪で、でも根は憎めないやついるよね!と思いました。というか(憎めないかはさておき)むしろ自分がこういうタイプかもしれない……苦笑
ただ、これは自分が藤ヶ谷さんのことをふだん追っているからなのかもしれないのですが、役である藤井肇と藤ヶ谷太輔が二重写しというか、同時に存在しているような不思議な気持ちにもなりました。役に入りきれていないとかそういうネガティヴな意味ではなくて、藤井肇という青年の姿を通して藤ヶ谷太輔という人間性が本人も意識していない形で透けて見えるというか……なんて言ったらいいんだろう? 本当はこのあたりを確かめるためにももう一回くらい入りたかったのですが残念。
場面が次々に切り替わり、そのたびに話が核心へと近づいていくので、2時間だれることなく引き込まれてあっという間に話が進んでいきます。決してコメディというわけでもないのですが思ってもいなかったくらいたくさん笑わせてくれたり。圭ちゃんのくだりとか……笑 かと思いきやクライマックスの銃を構えるシーンでは息をするのも忘れそうなほど見入ってしまいました。コルトを持つ藤ヶ谷さんはめっちゃかっこよかったのでぜひ拳銃を扱う役を今後も……。
ところどころ泣き声も聞こえてきたのですが、個人的にはそんな泣ける話ではないと思ったなあ。というか安易なお涙ちょうだいではなく、はっきりとした正解は観客ひとりひとりに委ねているところがよかった。各々の思う正しさには当然ズレがあるけど、それを過信するのは違うし、だからといっていたずらに曲げることなく、とにかく進むしかない。「人生は選択の連続だけど、選ばないことがいちばんよくない」みたいな言葉が印象的でした。
キーアイテムとなる"コルト"はハジメの子供のころの心残りを象徴しているのかなーとなんとなく思いました。拳銃という、圧倒的な力をもつけれど言ってしまえば非現実的な存在が重要なアイテムとして登場するのはハジメの頑なさやいびつな全能感を表しているのかなと。最後のアルバムのくだりとかちょっとなんでも私信だと勘違いするアイドルオタクみたいだったもん笑 その心のしこりをゴミ箱にちゃんと捨てて、そこからのハジメの最後のひとことは事前にもしかしてこれかなと思っていたとおりの言葉だったのだけど、やっぱりこれしかないなと感じたし、テーマにもしっくりきていて良いラストシーンでした。
あとやっぱり藤ヶ谷さんの悶え苦しむ演技が存分に見られたのがよかった。演出家のかたもキラキラした職業なのにどこか陰があるところが気になるみたいなことを言ってたと思うのですが、そのとおりだなーと。そうかと思えば居酒屋の場面では升さんと楽しそうなアドリブの応酬をしたり、カーテンコールでは打って変わっていつもの愛くるしい笑顔で投げキッスをくれたり、やっぱり全然目が離せない! アイドルとしても異性としてももちろんかっこいいと思っているけど、なによりひとりの人間としての藤ヶ谷さんにとても惹かれるし好きだなとあらためて実感しました。理屈抜きで、まず最初に小学生の姿でステージに出てきた瞬間のそのピュアネスに涙が出そうになったんだよ。。
始まるまではキャパが小さすぎる!とぶーぶー言っていたのですが、実際観劇してみるとあまり大きい劇場で演じられるのは向かない作品のような気がしました。なのでパルコ劇場で観られたのは幸運でした。がんばって行って本当に本当によかったです。。